むらにーの論文集

むらにーの論文集です。

文系修士は何を読むべきか。〜例の立命館の論文から

題名通り。


文系の生存理由は、名だたる哲学者や言語学者などに譲るとして(仲正昌樹先生の本などを読まれるのがよろしいか)。

ここでは修士の学生諸君が何を読むべきかについて考えていきたいと思う。

「読むべきか」とは、読むのに(修士として)相応しいであるというのではなく、(修士として)当然読んでいるという意味である。

まずは本の紹介から。

社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論

社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論

ご存知の通り、アメリカでは社会科学における方法論として(学部レベルの)教科書である。当然、原文で読むのが望ましいが、本気で学者を目指したり東大院に在籍していたりしなければそのような努力をしようと思わないでしょう(無慈悲)。


本命はこちら。

創造の方法学 (講談社現代新書)

創造の方法学 (講談社現代新書)

1979年に発売されたものだが、今も日本の学会(とりわけ社会科学界隈)では強い影響力を持つとされる1冊。
日本の学者にとっては非常に耳の痛い話が収録されていることも関連し、高根先生は日本の学会ほとんどから干されていく(最期は無惨な死)。そのため、誰も表ではこの本を紹介しない。したがって、修士課程の学生の研究についてはお粗末なものになりがち。
この本が書かれた時代というのは、(本当かどうかは知らないが)、マキャヴェリの『君主論』の中で'stato'が何回出てくるかをカウントすることが研究業績になった時代ともされる。
本書は半分が筆者のアメリカ日記みたいなものであるので大変読みやすいものとなっている。修士程度の実力であれば読むのに苦労しないだろう。

続いてはこちら。

社会学研究法 リアリティの捉え方 (有斐閣アルマ)

社会学研究法 リアリティの捉え方 (有斐閣アルマ)

高根先生の本を表立って再録をしてはいないが、『創造の方法学』で紹介された研究の方法論をとりわけ専門的な見地から第一線の学者の方々が紹介する専門書である。
アルマシリーズの最高難易度だが修士の実力で読み解けるレベルでしょう(所詮は教科書なので深く考えなくとも良い)。本書は三部構成となっており、前半は人文寄りの研究手法、間に実地研究、後半は統計科学を用いた現代の主流の方法論が紹介されている。
難しいことが書かれていると思ったら、高根先生の本に戻ればわかりやすく説明されているので、二冊を隣に並べて勉強されるのがよろしいかと。

最後はこちら。

原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ

原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ

歴史から理論を創造する方法: 社会科学と歴史学を統合する

歴史から理論を創造する方法: 社会科学と歴史学を統合する

つい最近の著書になるが、保城先生の本は高根先生の本を再録している。
文系の研究の中でも「なぜ?」という問題提起をするものが優れた研究であるという筆者の主張。これは高根先生の本にも書かれている。
社会科学の方法論それ自体から本書の意義を論じるとすれば、非常にお粗末で説明不足な箇所があると酷評せざるを得ない。また方法論については先のアルマシリーズの方が豊富である。

しかしそれを抜きにしても文系の研究がどうであるべきかを論じたのがようやく日の目を浴びれるようになったと喜ぶべきか。あるいは、学者の怠慢な姿勢を非難すべきなのか。

研究者になるにせよ、ならないにせよ修士課程を歩まれたのであれば、もう少し社会をどのように見るかについて、以上の本を参照しながら研究をされるのが望ましいのではないだろうか。